高血圧症
hypertension

高血圧症

高血圧症とは、繰り返し測定しても正常と比べて、血圧が高いという病態のことで、収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上を指します。

日本の高血圧有病者数は約4,300万人と推計され、国民の3人に1人と、今や「国民病」と言っても過言ではありません。しかし、「高血圧」になっても基本的に自覚症状はないので、有病者のうち約3割の方は気づいておらず、知らないうちに発症・進行していることが少なくありません。

生活習慣が発症の深く関与している「生活習慣病」のひとつであり、高血圧を放置していると動脈硬化に繋がります。動脈硬化が進行すると、将来的に脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)、狭心症(きょうしんしょう)、腎臓病など命にかかわる危険な合併症を引き起こす恐れがあるため、「早期発見・早期治療」が重要です。また、高血圧症の人は「認知症」になりやすいことも知られています。

健康診断・人間ドックで高血圧を指摘された方、ご自身の血圧が気になり始めた方、ご家族に高血圧の方がいて心配な場合には、お気軽に当院までご相談ください。

高血圧になりやすい人

以下に挙げる生活習慣・持病などについて、思い当たる項目が多いほど高血圧になりやすい傾向がありますので、注意が必要です。

  1. 濃い味付け(しょっぱいもの)が好き
  2. ご飯を食べる時間が不規則
  3. 野菜・果物などはあまり食べない
  4. 揚げ物など油っぽい食べ物が好き
  5. 運動不足
  6. お酒をたくさん飲む
  7. タバコを吸う
  8. 日頃からストレスを感じることが多い/ストレスが溜まりやすい
  9. 睡眠不足
  10. 家族に高血圧の人がいる
  11. 血糖値が高い(と言われたことがある)
  12. 腎臓または内分泌系の持病がある
  13. 睡眠時無呼吸症候群または肥満である

項目①~⑪に当てはまる数が多い方は、高血圧患者さんの約8~9割を占める、原因がはっきりしないタイプの「本態性高血圧」を発症するリスクが高く、⑫または⑬に当てはまる方は血圧が上昇する原因があるタイプの「二次性高血圧」を発症するリスクが高いとされます。

高血圧症の基礎知識

厚生労働省によると、高血圧が完全に予防できるようになれば、年間10万人以上の人が死亡しないで済むと推計されています*1

*1 (参考)Ikeda N, Saito E, Kondo N, Inoue M, Ikeda S, Satoh T, Wada K, Stickley A, Katanoda K, Mizoue T, Noda M, Iso H, Fujino Y, Sobue T, Tsugane S, Naghavi M, Ezzati M, Shibuya K. What has made the population of Japan healthy? Lancet 2011; 378:1094-1105.

血圧とは?

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す力(圧力)のことです。血圧は常に一定ではなく、一日の中で変動しています。一般的に、朝起きたときに大きく上がり、昼頃にピークを迎え、夕方から少しずつ低下して、寝ているときは低い状態で安定しています。ほかに、運動しているときや食事・入浴・トイレなどの日常動作、喫煙・ストレスによっても血圧は上がります。

高血圧の定義・診断基準

日本高血圧学会の診断基準では、正常血圧を120/80mmHg未満(診察室血圧)と設定し、高血圧を以下のように定義しています。

  • 病院での測定値(診察室血圧)

何度か測定して、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上

  • 自宅での測定値(家庭血圧)

5~7日間測定した平均値で、最高血圧が135mmHg以上、または最低血圧が85mmHg以上

※家庭血圧は診察室血圧よりも5mmHg低い基準を用います。

ただし、高血圧と判定されなくても、正常高値血圧以上(診察室血圧120/80mmHg以上)の場合には、脳心血管疾患の発症リスクや将来的な高血圧への移行確率が高まるという調査結果*2が国内外で報告されています。

*2(参考)高血圧治療ガイドライン2019 P.18|日本高血圧学会

(図)血圧の分類

なお、近年ご家庭での血圧測定が一般化されてきており、家庭血圧の診断基準も確立されていることから、高血圧症の診断は、診察室血圧と家庭血圧の総合的な判断によって行われます。

特に家庭血圧はご自宅でのリラックスした環境の中で測定した血圧となるので、「普段の血圧」を一番反映しているものと考えられています。そのため、家庭血圧と診察室血圧に差があった場合には、家庭血圧による診断を優先します。

≪病院と家で血圧の測定値が違う!?

高血圧患者さんの中には、家庭血圧と診察室血圧が異なるという方がいらっしゃいます。

白衣高血圧

家庭血圧では正常値でも、病院で測ると緊張して血圧が高くなってしまうケース。

仮面血圧

診察室血圧が正常値内なのに、診察室以外での血圧が高くなってしまうケース。
仮面血圧のうち、血圧が上昇している時間帯によって、さらに細かく分類されています。

  • 早朝高血圧

早朝の家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上。脳心血管病リスクが高いとされます。

  • 昼間高血圧

日中のABPM*3平均値が135/85mmHg以上。精神的・身体的ストレスの影響や肥満、高血圧家族歴がある方に多くみられます。
*3ABPM:24時間自由行動下血圧測定のこと。一日の血圧変動を観察できるので、降圧剤の効果測定や診察室血圧・家庭血圧では分からない仮面高血圧などの血圧情報を調べることが可能です。

  • 夜間高血圧

夜間のABPMや家庭血圧の平均値が120/70mmHg以上。脳心血管病の発症リスクが大きく、認知・身体機能の低下と関連性があるとされます。

高血圧の症状

高血圧は知らない間に発症・進行しやすい病気のひとつであり、「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれます。高血圧は、その先にある合併症に注意が必要です。

高血圧の症状

高血圧を発症しても、基本的には「無症状」です。

ただし、自覚症状がないからと言って、放置して良い病気ではありません。自覚症状として現れていませんが、水面下では少しずつ血管の動脈硬化が進んだり、腎臓の働きが悪くなったりしています。

また、かなり血圧が高くなると、頭痛・めまい・肩こりなどの症状が現れることがありますが、こうした症状は必ずしも「高血圧によって起きている」とは言い切れないため、普段と違う症状に気づいたら、早めに医師に相談しましょう。

気を付けたい合併症

高血圧を放置していると、動脈の血管の柔軟性が失われ「動脈硬化」に繋がります。動脈硬化が進行すると、血管の内壁がプラーク(コレステロールでできたコブ)によって狭くなり、血液の流れが悪くなるため、様々な臓器に障害を引き起こします。

心臓

高血圧になると、心臓はその圧力に対抗して血液を送ろうとするため、次第に筋肉が付きます(心肥大)。心肥大になると酸素需要が増え、心臓に酸素を供給する「冠動脈」にも影響を及ぼして供給量が減ります。その結果、狭心症・心筋梗塞・心不全を引き起こす要因になります。

  • 狭心症

冠動脈が狭窄して(狭くなる)、心臓に十分な血液を送れなくなるため、急に胸が締め付けられるような痛みが現れます。血管が完全に詰まるわけではなく、症状は長くても15分程度ですが、心筋梗塞に進行することがあるので、受診しましょう。

  • 心筋梗塞

冠動脈が閉塞して、心臓の筋肉が壊死する(細胞が死んでしまう)状態です。激しい胸の痛み、ショック状態(血圧低下)、動悸・冷や汗などが現れ、ときには命を落とす場合もあります。

  • 心不全

心臓の働きが低下して、全身への血液循環がうまくいかなくなった状態です。また、心臓は血流を保つために血液を溜め込むようになり、結果として、足・顔などのむくみ、動くと苦しい(労作時息切れ)などの症状を引き起こします。

脳の血管で動脈硬化が進行すると、脳血管障害(脳卒中)が起こりやすくなります。

  • 脳出血

脳の細い血管に圧力がかかって、血管が破裂すること。今まで感じたことがない程の激しい頭痛が現れます。

  • 脳梗塞

血栓(硬くなった血管の一部が破けてできた血の塊)によって部分的に血液が流れなくなることで、その先の組織に酸素や栄養が行き届かず、壊死します。麻痺・しびれ・呂律が回らないなどの症状が現れ、後遺症が残る場合もあります。

  • 認知症

脳梗塞や脳内出血などが原因となり、その血管が担っていた神経細胞に酸素・栄養が行き渡らなくなることで機能を失い、「血管性認知症」を引き起こします。

障害を起こした脳の部位によって、現れる認知機能の低下は異なりますが、血管性認知症の場合では、物忘れ、言語障害、運動・感覚障害(麻痺)、突然笑い出す・泣き出すなどの感情失禁といった様々症状がまだらに現れる特徴があります。

腎臓

腎臓は、血液をろ過して、体内の老廃物(塩分と水分)を「尿」として排出することで、血圧を調整しています。高血圧状態が続くと、動脈硬化の進行により血流が低下すると、腎臓機能も低下するため、余分な塩分・水分を適切に排出できなくなります。体液量が増加すれば、その分だけ心臓の負担が増え、血圧が上がるという悪循環に陥ります。

  • 腎硬化症

高血圧により腎臓の血管が動脈硬化を起こして、ろ過機能を担う糸球体(しきゅうたい)が次第に硬化して腎機能が低下した状態です。老廃物のろ過が十分に行えなくなるので、慢性腎不全に繋がります。

  • 腎不全

腎不全とは腎機能が正常の30%以下の状態です。一度慢性腎不全になると、腎機能は回復しません。老廃物が体内に溜まっていくと、「尿毒症」を引き起こして最終的に死に至ることから、生命維持のために人工透析が必要となります。

血管

  • 大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)

高血圧が続くことで、全身に血液を送る太い血管(大動脈)の壁にコブ(瘤)のようなものができた状態です。動脈瘤ができても無症状ですが、破裂すると強烈な痛みと大出血による意識障害を起こして突然死に繋がります。また、血管壁がもろくなることにより、裂けて血液が入り込む「解離性大動脈瘤」が起こる場合もあります。

  • 下肢閉塞性動脈硬化症

足の血管の動脈硬化によって、血管が細くなったり詰まったりする病気です。足への十分な血流が保てなくなるので、歩行時の足のしびれ、痛み・冷たさを感じたり、休み休みでないと歩けなくなったりします(間欠性跛行:かんけつせいはこう)。進行すると安静時にも症状が現れ、足の切断が必要となることがあります。

早朝の頭痛、夜間の頻尿、呼吸困難、めまい・ふらつき、足の冷えを感じるなどの症状は、高血圧による合併症のサインかもしれません。今までと違う症状を感じたら、お早めに医師にご相談ください。

高血圧症の原因

高血圧の原因には、「遺伝的要因」と「環境的要因」の2つがあります。
遺伝的要因に加え、環境的要因が相互作用することで、発症するとされています。

遺伝的要因

遺伝的要因とは、生まれ持った体質のことです。ただし、両親、兄弟・姉妹が高血圧なら、必ず高血圧となるという訳ではありません。しかし、「高血圧になりやすい体質である」と考えられています。

環境的要因

環境的要因には次のようなものがあります。

1. 過剰な塩分摂取

最大の原因とされるのが、塩分の摂りすぎです。高血圧を招き、血管や心臓の負担を増大させます。その結果、動脈硬化や心肥大を引き起こし、脳卒中・認知症・心筋梗塞・心不全・腎不全などの発症要因となります。

2. 加齢

年齢を重ねると、血管壁の弾力性はなくなり、次第に硬くなっていきます。血管の内側が狭くなったり部分的に広がったりしやすくなります。

3. 家族性要因

高血圧の発症には家族性要因が約60%あると報告されています*4。これは「濃い味付けを好む」「偏食・過食による肥満が多い」「運動不足」など家族で同じような生活環境をしていることが関係していると考えられています。

*4(参考)一般向け高血圧治療ガイドライン2019解説冊子|日本高血圧学会ほか

4. 肥満

塩分が多く、味の濃い食事は食べ過ぎ・飲み過ぎに繋がりやすく、肥満の原因となります。その結果、肝臓などにも脂肪が蓄積してくると、インスリンが効きにくくなるだけでなく、近年、肝臓に脂肪が溜まったときに生じる神経信号が血圧上昇に関わっていることが判明しています*5。また、肥満の方はそうでない方に比べて、高血圧リスクが約2倍高いと報告されています*6

*5(参考)「肥満になると血圧が上がるメカニズムを解明」東北大学プレスリリース2011年
*6(参考)肥満症診療ガイドライン2016

5. ストレス(心理的要因)

精神的・肉体的ストレスを感じ続けると、交感神経機能が必要以上に活発になります。それに伴って心拍数が増加すると、末梢の血管を収縮させる働きがあるため、血圧が上昇します。

6. 腎血管性高血圧や睡眠時無呼吸症候群などの病気

腎血管性高血圧、腎動脈狭窄、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫などの病気が原因の場合、病気の治療をすることによって、高血圧の改善が期待できます。

7. 生活習慣

  • 喫煙、過度な飲酒、睡眠不足、疲労など不規則な生活習慣
  • 急激な温度変化(ヒートショック現象)
    ※冬の時期、寒い脱衣所で脱いで熱い湯船に入ったとき、暖かい室内から寒い外に出たときなど、温度差による血圧変動には要注意!
  • 排便時
  • 野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足
  • 激しい運動

高血圧症の検査

当院では、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインに準拠した検査を行っています。

  • 問診

自覚症状や高血圧を指摘された時期、持病、家族歴など過去も含め、現在の健康状態についてお伺いします。また、運動習慣・睡眠習慣、食習慣・ストレス状況といった生活習慣についても詳しくお伺いします。

  • 血圧測定

診察室血圧を測定します。

診察室血圧が高い場合、病院で測ると血圧が高くなってしまう「白衣高血圧」が疑われるため、自宅でも血圧測定を行っていただくことがあります。

※白衣高血圧の場合にはすぐ治療する必要はありません。

通常の薬物治療に反応しない場合など、必要に応じて、以下のような追加検査を行います。

  • 血液検査

高血圧と共に動脈硬化を引き起こす脂質異常症、糖尿病の有無、腎臓機能低下やホルモン異常など血圧上昇を引き起こす病気がないかを調べます。比較的若い方に多い「二次性高血圧」を疑うときなどに行います。

  • 尿検査

腎臓への負担、腎臓病の有無、ホルモン異常などを調べます。

  • 心電図

心筋梗塞、心房細動などの不整脈(脈の乱れ)、心肥大などの有無を調べます。

  • 胸部レントゲン検査(X線検査)

心肥大・心不全の有無などを調べます。

高血圧症の治療

高血圧は、生活習慣病のひとつです。
脳卒中・心筋梗塞などの脳心血管疾患や腎機能の低下などを防ぐためにも、早めに血圧コントロールを始めましょう。
当院では患者さんとよく話し合いながら、治療を進めていきます。

生活習慣の改善

生活習慣の改善による降圧効果を維持するためには、長期間にわたり続ける必要があります。大変に感じるかもしれませんが、続けるための秘訣は「できることから、少しずつ気長に取り組むこと」です。

食事療法

  • 塩分制限

日本人の平均食塩摂取量は1日あたり約10gを越えていますが、高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の患者さんについて1日の塩分摂取量を「6g未満」にすることを強く推奨しています。しかし、人が生きていく上で塩は欠かせません。急激に厳しい減塩を行うと、体調を崩すこともあるので少しずつ摂取量を落としていくようにしましょう。

香辛料・柑橘類などを調理で積極的に利用する、醤油やソースなどを「かける」のではなく「つけて」使う、麺類の汁は残すなど、食生活を見直すことをおすすめします。

  • 野菜や果物の積極的摂取

野菜や果物に多く含まれているカリウムには、降圧効果が期待できます。

ただし、肥満の方や糖尿病患者さんの場合、果物の摂取は適正エネルギー摂取量の範囲内に収める必要があり、目安としてはバナナ中1本・リンゴ中1/2個程度です。また、慢性腎臓病患者さんでは腎機能の状態次第ではカリウム制限が必要となります。

  • 魚(魚油)の積極的摂取

青魚・エゴマ油・アマニ油などに多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などは「n3多価不飽和脂肪酸」と呼ばれ、降圧効果があります。

特に魚を中心とした日本食は、高血圧のみならず動脈硬化・脂質異常症など生活習慣病の予防に役立ちます。

適正体重の維持

肥満は高血圧発症の危険因子となります。WHO(世界保健機関)では、BMI*7値18.5~25.0未満を「普通体重」、25.0以上を「肥満」と定義しています。

*7BMI:体格指数のことで、BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)2]。

日本人肥満者を対象とした研究では、約4kg減量すると収縮期血圧(上の血圧)約4mmHg/拡張期血圧(下の血圧)約3mmHgの血圧低下効果があったと報告されています*8

*8(参考)高血圧の治療―生活習慣の改善|HEART’s Selection(高血圧新ガイドラインを読み解く)2015 年 47 巻 4 号 p. 409-414

特に、若年期から中年期の体重増加が大きいと、高血圧を発症しやすくなる傾向があります。また、内臓の周りに脂肪が多く蓄積される「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の方は、高血圧・脂質異常症・高血糖が多い傾向にあります。メタボリックシンドロームの診断基準である腹囲(男性85cm以下、女性90cm以下)に注意しましょう。

運動療法

運動療法は血管内皮機能(血管の健康状態)の改善が期待できます。AHA/ACC(アメリカ心臓病学会・心臓協会)のガイドラインの中で、習慣的な運動は収縮期血圧で約2~5mmHg/拡張期血圧で約1~4mmHgの低下効果があるとしています。運動で身体活動量が増加すると、血圧低下だけでなく体重・体脂肪・ウエスト周囲長の減少、インスリン感受性や脂質の改善などにも効果的であることが分かっています。

一方、身体活動量が低下すると、脳梗塞や心筋梗塞など心血管疾患の発症リスクを上昇させます。

ただし、持病がある方は医師に運動の可否、適切な運動量などを確認してから行いましょう。また、運動前後には準備・整理運動を行いましょう。運動量の目安は1日30分以上、週3回、汗ばむ程度(例:早歩きのウォーキング・自転車など)とされています。運動不足の方がいきなり激しい運動を取り入れるのは運動後の血圧が上昇しやすく、よくありません。1回10分を3回など複数回に分けて運動する、「できるだけ歩く」「階段を使う」「自転車で買い物に行く」といったような日常生活の中で身体活動量を増やすことから始めると良いでしょう。

節酒

飲酒習慣は血圧上昇に繋がります。特に大量のアルコール摂取は高血圧のほか、脳卒中、アルコール性心筋症、心房細動、夜間睡眠時無呼吸などを引き起こし、ガンの原因にもなります。

飲酒量を80%減らすと、1~2週間のうちに血圧低下を認めることが示されています。毎日飲酒される方は「週に2回の休肝日」を設けると良いでしょう。

高血圧の方では、おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウィスキー・ブランデーダブル1杯、グラスワイン2杯弱相当が1日あたりの飲酒目安であり、女性はその約半分とされます。

禁煙

たばこを1本吸うと、血圧上昇が15分以上続いて、酸化ストレスの増大や血管収縮が起こります。喫煙習慣による血圧への影響は明確になっていませんが、喫煙は動脈硬化の原因のひとつであり、促進させます。

受動喫煙*9でも血圧の上昇・脳心血管疾患・がんの発病リスクを高めます。

*9受動喫煙:他人の喫煙で発生したタバコの煙を吸ってしまうこと。タバコの先から上る煙(副流煙)には、主流煙よりも多く有害物質が含まれています。

日常生活の中で気を付けたいこと

  • 寒さ

寒さで血管が収縮するため、冬は夏と比べて血圧が高くなりやすいです。高血圧の患者さんは、冬のトイレ・浴室・脱衣所など室内外の温度差がある場所では注意しましょう。

  • ストレス

社会的・精神的ストレスがあると、高血圧の発症リスクが2倍以上高くなると報告されています。ストレスコントロールも血圧調整に大事です。

  • 睡眠

睡眠障害は血圧上昇や脳心血管病の発症リスクを高めるとされており、睡眠障害の改善が降圧に有用と考えられています。

  • 入浴

お風呂は熱すぎないようにしましょう。室温20℃以上、湯温40℃以下であれば、血圧はほとんど上がらないとされています。38℃~42℃の湯温で5~10分くらいの入浴がおすすめです。高血圧患者さんには銭湯の湯温は熱すぎることが多く、昨今サウナブームですが、急な寒暖差は心臓・血管に負担をかけるため、サウナや冷水浴も避けたほうが無難です。

  • 便秘

便秘があると、排便時のいきみで血圧を上昇させます。

薬物治療

生活習慣の見直しを2~3か月試みても、血圧コントロールが難しい場合、合併症リスクが高い場合、既に高血圧に伴う脳心血管疾患がある場合などは、お薬で血圧を下げる治療を併用して行います。

血圧を下げるお薬(降圧剤)には、目的に合わせ様々な種類がありますが、患者さんの血圧レベル・合併症の有無など総合的に判断して、組み合わせて使用します。最近は複数のお薬が一つになった配合薬も登場しています。

  • 血管を広げる
    ※薬剤によっては、グレープフルーツと一緒に飲むと、薬の効果が強くでてしまい、副作用が出やすくなることもあります。
  • 血管を収縮させる物質をブロックする
  • 血液から食塩と水分(血流量)を減らす
  • 心臓の過剰な働きを抑える

なお、自己判断でお薬を中止したり、減量したりすることは大変危険です。

「内服薬が多くて飲むのが大変」など、気になる点がある方は、医師までお気軽にご相談ください。

よくある質問

1. 高血圧と指摘されましたが、自覚症状はありません。治療する必要はあるのでしょうか?

高血圧を発症しても、自覚症状がありません。高血圧状態が続くことで、全身の様々な器官に少しずつダメージを引き起こしていきます。症状が現れる頃には、何らかの病気を発症している可能性があり、命に関わる重篤な病気を誘発するケースがあります。

だからこそ、高血圧は何か症状が出る前から治療を開始することが大切なのです。高血圧の治療は、将来の自分への投資であると言えます。

適温の室内で少し安静にした後、朝は起床後1時間以内、排尿後、お薬の服用や朝食前に、夜は就寝前に測定しましょう。測る際に腕は心臓の高さに合わせます。できれば、1度に2回ずつ計測し、測定したすべての血圧を記録すると良いでしょう。

院長からのひとこと

健康な人でも、血圧は加齢とともに年々上昇していきます。日本では、40歳を超えたあたりから徐々に高血圧症の方が増え70歳以上の70%の人が高血圧症になります。そのため、健康な人でも「年1回は健康診断を受ける」「40歳を超えたら血圧計を購入し自宅で測定してみる」「日ごろから食事を摂る際には塩分表示を気にしてみる」など高血圧症に注意して生活しましょう。

記事執筆者

相生山ほのぼのメモリークリニック 院長 松永 慎史
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  • 略歴・経歴

    • 2007年藤田医科大学医学部 卒業
    • 2007年藤田医科大学病院 研修医
    • 2009年藤田医科大学医学部 精神神経科
    • 2011年医療法人静心会 桶狭間病院 藤田こころケアセンター 医長
    • 2014年藤田医科大学医学部 精神神経科講師
    • 2018年藤田医科大学医学部 認知症・高齢診療科(内科) 講師
    • 2020年相生山ほのぼのメモリークリニック開院
  • 所属学会

    • 日本認知症学会 専門医・指導医
    • 日本老年精神医学会 専門医・指導医
    • 日本精神神経学会 専門医・指導医
    • 日本精神神経学会 認知症診療医
    • 精神保健指定医
    • 難病指定医
    • レビー小体型認知症研究会 推奨医
    • 認知症サポート医

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