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「最近、忘れっぽい……」「物をよく失くす」など、「物忘れ」に関するお悩みはありませんか?
当院では認知症外来・物忘れ外来を開設し、専門医による認知症の診断と治療のほか、予防やご家族の介護相談を実施しております。また、認知症の予備軍と言われる「軽度認知障害(MCI)」*1の早期発見や治療、発症の予防などにも積極的に取り組んでおります。
日本認知症学会 専門医・指導医である院長をはじめ、看護師、心理士、精神保健福祉士といった多職種のスタッフが在籍し、患者さんの総合的なサポートに努めておりますので、お気軽にご相談ください。
*1 MCI:Mild Cognitive Impairmentの略。
認知症とは、認知機能障害(記憶障害、遂行機能障害、失語など)によって、日常生活に支障をきたしている状態を言います。年齢を重ねると誰でも忘れっぽくなりますが、認知症はこのような「加齢による生理的な物忘れ」だけでなく、脳の病気や障害によって生じるものであり、脳の神経細胞が壊れることで、認知機能の低下を招くのが大きな特徴です。
認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ症状の現れ方や進行には違いがあるため、病気に対する正しい知識を身に付け、適切な治療や対策を行っていくことが重要になります。
早い段階で発見し、必要な治療に繋げることで、物忘れの症状が改善する場合や、病気の進行や発症を遅らせることができる場合もあります。気になる症状が現れた時には見過ごさず、早期に受診して専門医の正しい診断を受けることをおすすめします。
認知症の多くは、ちょっとした「物忘れ」から始まります。患者さんご本人はもちろん、同居されている身近なご家族の方で以下のような変化に気付いた場合には、ぜひ一度ご相談ください。
※検査結果や治療方針、対処方法については2回目の受診時にご説明いたします。
※必要時には、連携医療機関で頭部MRI、脳血流シンチ、MIBG心筋シンチ、アミロイドPETなどの精密な検査を検討します。
認知症と診断された場合、ご本人やご家族と十分ご相談の上、治療方針を決定します。
患者さんの中には、生活習慣病などの持病がある方もいらっしゃるため、地域の医療機関と連携し、併行して治療を進めていくケースもあります。また、将来的な病状の変化はもちろん、社会保障制度や地域の介護・福祉サービスの利用法など、病気になってみないと分からないことはたくさんあります。
当院では、患者さんやそのご家族により良い医療を提供することを目標に、かかりつけ医の先生、総合病院、担当のケアマネージャー、地域包括支援センター、介護施設、訪問看護ステーション、薬局、市区町村の役所、保健センターなど、皆さんを取り巻く関連機関と連携し、包括的なサポートを行います。
その他、必要な書類がございましたらお気軽にお申し出ください。
※書類の作成には、1~2週間程度お時間をいただいています。
※書類の内容によっては精密な検査が必要な場合がございます。
当クリニックでは、名古屋市で実施されている「物忘れ検診」を実施しています。
65歳以上の名古屋市民の方(認知症と診断を受けていない方)であれば、1年に1回無料で受けることができます。物忘れ検診では、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」や「DASC-21」*2を用いて総合的に認知機能と生活機能の評価を行います。
また、当クリニックは、物忘れ検診の「精密検査実施医療機関」に認定されており、物忘れ検診において認知症の疑いがあった方の精密検査も実施しております。お気軽にご相談ください。
*2 DASC-21:正式名称は「地域包括システムにおける認知症アセスメントシート」、高齢者の認知機能と生活機能を評価して認知症の検出と重症度を判断するための尺度。
認知症はさまざまな原因で起こることがありますが、認知症の中で最も患者数が多いのが「アルツハイマー型認知症」です。次いで、「レビー小体型認知症」「血管性認知症」「前頭側頭葉変性症」による発症が多くなっており、これらの4つの病気が原因で発症する認知症は全体の9割を占めると言われています。
アルツハイマー型認知症は、長い年月をかけて「アミロイドβ」や「リン酸化タウ」と呼ばれる特殊なたんぱく質が脳に蓄積することで発症すると考えられている認知症です。脳の神経細胞が減少し、物忘れや以前出来ていたことが徐々にできなくなる、といった症状が出るのが特徴です。
アルツハイマー型認知症の多くは、物忘れ(記憶障害)から始まりますが、失語(音として聞こえているものの、話が分かりにくい、物の名前が分からないなど)や遂行機能障害(計画を立てて行動することが出来ない)、失認(視力は保たれているものの、目で見た情報を形として把握することが難しい)、失行(手足は問題なく動くが、今まで行っていた動作ができなくなる)などが目立つ場合もあります。
レビー小体型認知症は、「α-シヌクレイン」と呼ばれる特殊なたんぱく質が脳に蓄積して発症すると考えられている認知症です。物忘れなどの認知機能障害が変動するのが特徴で、1日の中でも調子が良い時と悪い時があります。また、「幻視(実際にはないものが見える)」「パーキンソン病の運動症状(手足が震える、表情が硬い、動作が減る・ぎこちないなど)」「レム睡眠行動異常(睡眠中、夢を見て大声を上げる・暴れるなど)」などの症状が出ることもあります。
なお、レビー小体型認知症の場合、初期の物忘れ症状は軽度なことが多く、他の病気と診断されるケースも少なくありません。
前頭側頭型認知症は、40~60歳代で発症する患者さんが多い認知症です。
原因となるたんぱく質はさまざまで、前頭葉や側頭葉を中心に脳の神経細胞が減少していくのが特徴です。「同じ行動パターンを繰り返す」「周囲の刺激に過剰に反応する」といった行動に変化が現れる「行動障害型」と、言葉の障害が目立つ「言語障害型」があります。「他人への配慮ができなくなる」「周囲の状況に関わらず自分が思った通り行動してしまう」といった性格変化や行動異常が見られる一方、物忘れ症状は目立たないことが多く、精神疾患と間違われるケースも少なくありません。
血管性認知症は、主に脳梗塞や脳内出血などの「脳血管障害」をきっかけに発症する認知症です。
脳血管障害の起きた部位によってそれぞれ異なる認知機能の低下が見られるのが特徴で、物忘れ(記憶障害)のほか、言語障害、運動・感覚障害(まひ)、情動失禁など、さまざまな症状を生じることがあります。
「軽度認知障害(MCI)」は、認知症と健常な状態の中間で、認知症になる一歩手前の状態と考えられています。日常生活への支障は少ないものの、記憶力に軽度の低下が認められる段階であり、MCIの状態にある高齢者は400万人に上ると言われています。
MCIの状態をそのまま放置していると、やがて認知症に進行してしまいますが、早期に適切な対策を行うことができれば健常な状態に戻る場合もあり、認知症への移行を遅らせることも可能であることから、早期発見・早期対策が重要なカギなります。
当院では、このようなグレーゾーンの認知症予備軍とも言えるMCIの早期発見や早期治療、予防にも力を入れております。
認知症の治療は原因となる疾患によって異なります。
適切な治療を行うことで、認知機能が改善する認知症もありますが、「アルツハイマー型認知症」などの中枢神経の変性を伴う認知症の場合、現時点では根本的な治療法がなく、完全に進行を止めることは難しいため、症状の進行を遅らせることが主な目的になります。
その他、当院では、お薬の治療以外にも精神的な症状の治療や、予防や介護の助言なども並行して行っております。患者さんご本人をはじめ、ご家族のお気持ちや体調にもできる限り配慮することを心がけ、日々診療にあたっています。