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2026.02.01

認知症と睡眠:夜眠れない・途中で目が覚める…どうしたらいい?

「なかなか寝付けない」

「夜に何度も起きる」

「昼間うとうとして、夜が眠れない」

睡眠の悩みは、年齢とともに増えやすいです。

2026年1月10日に、当院の認知症セミナーで「睡眠と認知症」についてお話しましたので、その内容を患者さんやご家族向けにブログにまとてみました。


1)睡眠時間や質は年齢で変わる

年を取ると、

  • 寝つきに時間がかかる
  • 眠りが浅くなる
  • 夜中に目が覚めやすい
  • 朝早く目が覚め、その後眠れない
  • 睡眠時間が短くなる

といった変化がみられます。

実は、ここまでは加齢による自然な変化も含まれます。
最近の研究では、25歳前後では平均睡眠時間は約7時間ですが、高齢になるにつれて徐々に短くなり、60歳代では約6時間程度になり、その後も加齢とともに平均睡眠時間は短くなります[1]。
また、深い睡眠(徐波睡眠)も減少し、途中で目が覚める時間(中途覚醒)は増えることも知られています[1,2]。

一方で、治療が必要な睡眠障害が隠れていることもあります


2)睡眠は「脳のメンテナンス時間」

睡眠は、ただ体を休めるだけではありません。脳にとって、

  • 記憶の整理・定着(日中の出来事を脳が整理します)[3]
  • 脳の回復(集中力や気分にも影響します)
  • 老廃物の排出(睡眠中に“脳の掃除”をしています)[4]

といった重要な働きがあります。

そのため睡眠が乱れると、
「物忘れが増えた気がする」「ぼんやりする」「イライラする」
などが目立つことがあります。


3)「眠れない」は認知症のリスク

近年の研究では、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が、将来の認知機能低下や認知症のリスクと関連することが報告されています[5,6]。

*これは「眠れない=必ず認知症になる」という意味ではありません。

ただ、睡眠は生活の中で改善しやすい要素でもあります。
だからこそ、早めに整える価値があります。


4)よくある睡眠障害(受診の目安)

不眠症

  • 寝つけない(入眠障害)
  • 夜中に何度も起きる(中途覚醒)
  • 朝早く目が覚める(早朝覚醒)
  • 眠りが浅く、寝た気がしない(熟睡感がない)

受診の目安
「週3回以上」あり、「日中の生活(意欲・集中・気分・転倒など)に影響がある」場合は相談をおすすめします。


睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に10秒以上の無呼吸が、1時間あたり5回以上(または一晩に30回以上)みられる病気です[7]。

  • 大きないびき
  • 呼吸が止まっていると指摘される
  • 朝の頭痛
  • 口の渇き
  • 日中の強い眠気

がある場合は要注意です。
検査・治療で改善できることが多いため、心当たりがあればご相談ください。


レム睡眠行動障害

夢の内容に合わせて、叫ぶ・殴る・蹴るなどの行動が出る睡眠障害です。
パーキンソン病やレビー小体型認知症の前触れとして現れることがあることが知られています[8]。

心当たりがある場合は医療機関へご相談ください。


5)良い睡眠をとるために

  • 毎日少しでも体を動かす(30分程度の散歩など)
  • 朝〜午前中に光を浴びる
  • 昼寝は20〜30分まで、夕方以降は避ける
  • カフェインは夕方以降控える

(コーヒー・紅茶・緑茶・エナジードリンク・コーラ・チョコレートなど)

  • お酒は1合まで(寝つきは良くなっても途中で目が覚めやすくなります)
  • 寝室の暗さ・音・室温・寝具を整える
  • テレビやスマホは寝る直前は避ける

6)睡眠薬について:大切なのは「安全性」

どうしても眠れない場合、睡眠薬も治療の選択肢になります。
ただし高齢の方では、ふらつき・転倒・翌日の眠気が問題になることがあります。

そのため当院では、「効けばいい」ではなく、転倒リスク・生活状況・併用薬も含めて、必要最小限で安全に使える方法を一緒に検討します。

現在、睡眠薬も、いくつか種類があります。

昔の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)*には、依存性・耐性・離脱症状・筋弛緩作用などがありました。

*代表的なベンゾジアゼピン系薬剤:デパス(エチゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、ロヒプノール/サイレース(フルニトラゼパム)、ハルシオン(トリアゾラム)

現在は、依存性・耐性・離脱症状・筋弛緩作用がない

  • オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ(スボレキサント)、デエビゴ(レンボレキサント)、クービビック(ダリドレキサント)、ボルズィ(ボルノレキサント)
  • メラトニン受容体アゴニスト:ロゼレム(ラメルテオン)

が治療の中心になっています[9]。
主治医と相談しながら、自分に合った治療方法を選びましょう。


まとめ

年齢とともに睡眠は浅く・短くなります。
睡眠は、記憶や脳の回復にとってとても重要です。
不眠症や睡眠時無呼吸症候群などは改善できることが多いため、放置せず、まずは生活と環境を見直し、必要に応じて主治医に相談しましょう。


References

  1. Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C, Vitiello MV. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals. Sleep. 2004;27(7):1255–1273.
  2. Mander BA, Winer JR, Walker MP. Sleep and human aging. Neuron. 2017;94(1):19–36.
  3. Diekelmann S, Born J. The memory function of sleep. Nat Rev Neurosci. 2010;11:114–126.
  4. Nedergaard M, Goldman SA. Glymphatic failure as a final common pathway to dementia. Science. 2020;370(6512):50–56.
  5. Shi L et al. Sleep disturbances increase the risk of dementia: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2018;40:4–16.
  6. Ungvari Z et al. Sleep disorders increase the risk of dementia and Alzheimer’s disease. GeroScience. 2025.
  7. Epstein LJ et al. Clinical guideline for the evaluation, management and long-term care of obstructive sleep apnea in adults. J Clin Sleep Med. 2009;5(3):263–276.
  8. Postuma RB et al. Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. Brain. 2019;142(3):744–759.
  9. Sateia MJ et al. Clinical practice guideline for the pharmacologic treatment of chronic insomnia in adults. J Clin Sleep Med. 2017;13(2):307–349.

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