先日、 Annals of Neurologyに、睡眠薬のスボレキサント(商品名:ベルソムラ)が、アルツハイマー病の原因と考えられている、中枢神経系のリン酸化タウやアミロイドβを、減少させる可能性がある事が報告されました(1)。この研究は、38名の認知機能障害のない45~65歳の方々に対して、スボレキサント20mgを内服するグループ、スボレキサント10mgを内服するグループ、プラセボを内服するグループにランダムに割り付け、脳脊髄液のリン酸化タウやアミロイドβが翌日およびその半日後まで、どう変化するのか調査した研究です。結果、スボレキサント20mgを内服したグループはプラセボのグループと比較すると、脳脊髄液中のアミロイドβを10~20%、リン酸化タウを10〜15%程度、統計学的有意に低下したと報告されています。これは、あくまで、小規模な健常者を対象とした試験のため、スボレキサントがアルツハイマー病の有用な治療薬だとは当然言えません。実証するには、大規模なアルツハイマー病の方を対象とした臨床試験が必要です。
ただ、これまでの臨床試験で、スボレキサントはアルツハイマー型認知症の不眠症に有効で、安全性も比較的高いことが報告されていますので(2)、この研究結果から、アルツハイマー型認知症で不眠症のある方にスボレキサントを選択するメリットが増えたと思います。
また、不眠症があって、認知機能障害が心配な方にも、スボレキサントを選択することはメリットの一つになるのかもしれませんね。
今後も、臨床医として、スボレキサントの研究結果には注目していきたいと思います。
また、皆さまの治療に役に立つような研究結果が出たら、ブログでも報告したいと思います。
外来でも、もし皆さまの気になる医療情報があれば、教えて下さい。その場でわからないことも多いかもしれませんが、後日、私の出来る範囲で文献など調べて、お答えするようにしますね。引き続き、よろしくお願いします。