老年精神科とは

老年精神科

※他の心療内科・精神科へ通院歴のある方は、必ず紹介状をお持ちください(他の心療内科・精神科へ通院歴のある方で、紹介状のない方の診療はお断りしております)。

日本老年精神医学会が認定する日本老年精神医学会専門医でもある当院長が、認知症をはじめ、身体疾患に伴って起きるとされる精神障害、高齢者に現れることが多いとされる、うつ病,不安障害,妄想性障害などについて診療していきます。診療科の名称としては、お堅い感じがするかもしれませんが、高齢者の方のこころの病気の診療やお悩みを聞いていくということが中心になります。病気などによって身体が動きにくくなって、最近ふさぎこんだ状態になっているというご年配の方もお気軽にご相談ください。

高齢者に見受けられる主なこころの病気

うつ病

高齢者のうつ病では、一見すると元気がない、1日中ボーッとしているという様子から認知症と勘違いされやすいこともあります。そのまま放置が続き、悪化させるようになると介護が必要になったり、認知症を発症することもあるので、早めにきちんと診断をつけて治療することが大切です。

発症の原因については、引っ越しなどによる環境の変化、大切な人や愛するペットとの死別、健康状態の低下、薬の飲み合わせといったことが考えられます。よくみられる症状としては、身体の不調(頭痛、めまい、嘔吐・吐き気、しびれ、耳鳴り など)を訴えて診察を受けるもののこれといった原因が見当たらない、落ち着きを欠いて、不安や焦燥感を訴えている、家に引きこもりがちになる、趣味など好きなことに全く興味を示さなくなったということがあります。

また先にも述べましたが上記のような症状は認知症と共通している点が多いですが、いくつか異なる点もあります。まず、高齢者のうつ病では、初期に身体的な不調を訴えることが多く、また何らかのきっかけによって上で挙げたような症状が急に出るようになります(認知症の場合は性格が変化していき、症状の現れ方はゆっくりです)。また気分の落ち込みも激しいです。このほか物忘れの症状もみられますが、それは加齢による自然現象の程度なので、忘れていることに自覚もあります。

治療について

なお、以上のような症状がみられたとしてもご本人様やご家族の方が判断するのは難しいと思われますので、必ず一度は医療機関へご相談ください。診断の結果、うつ病と診断されたら、薬物療法、精神療法、環境背景を整えるといった治療法を行っていきます。

薬物療法では、主に抗うつ剤を使用していきます。ただ、高齢者の多くは持病を多く抱えていることが多いので、薬の飲み合わせに注意しながら処方していきます。そのため、おくすり手帳をご持参されるようにしてください。また、精神療法としてカウンセリングを行うことで不安などが解消され、症状が軽減されることもあります。このほか、環境を整えてあげることで、患者さんが安心して暮らせる雰囲気づくりも大切です。孤独にしない、無理のない程度で役割を与える、地域の活動への参加を促すなど、とにかく一人で何もしない状態にさせないようにしていきます。

不安障害

不安障害は、不安な気持ちが異常に高まってしまうことで、日常生活に支障をきたしている状態の総称で、具体的な疾患としては、パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害があります。

パニック障害とは、これといった前兆もなく、恐怖感や不安感に襲われることで、息苦しくなって、やがてめまいや動悸などの症状が現れて「パニック発作」を起こし、これが繰り返すようになることで予期不安(いつ発作が起きるかという不安)や広場恐怖(密閉した空間(電車内 など)で発作が起きるかもという不安)といった症状も起き、外出も控えるようになるなどして日常生活に支障をきたしている状態を言います。なお発作自体は30分ほどで治まるようになります。

社交不安障害は、人の注目を集めるような場面で非常に強い緊張やストレスを感じ、発汗や震え、息苦しさなどの症状が出てしまう状態です。上記のような症状を見られたくないばかりに人前に出ることを極端に避けるようになって、日常生活に支障が出ている状態を言います。

また全般性不安障害ですが、これは日々の様々な活動や出来事について、自分ではコントロールできないほど過剰な不安や心配が生じ、この状態が通常はほぼ毎日、しかも長い期間にわたって続いている状態を言います。主症状としては、イライラする、疲れやすい、集中力が低下する、筋肉がこわばる、不眠といったものがみられます。なお不安の原因が特定している、2~3日程度の一時的な不安や緊張であれば、全般性不安障害とは診断されません。

これらの治療の基本は、抗不安薬や抗うつ薬のSSRIによる薬物療法となりますが、高齢者の場合は飲み合わせにも注意します。また非薬物療法、いわゆる精神療法として、認知行動療法(不安や恐怖にとらわれている思考パターンを変えていく)等も併行させ、患者さん自らが不安を制御していくための訓練も行っていきます。

妄想性障害

現時点で発症の原因はまだ特定できていませんが、妄想が単一もしくは複数持続することで、日常生活に影響が及んでいる状態が妄想性障害です。なお、妄想とは現実的でない、他者には理解されにくい信念のようなもので、これが長い期間続いているのが主な特徴です。また同じようなこころの病気として統合失調症も妄想の症状が出ることがありますが、この場合は妄想が症状の中心になることはありません。

そのほかの特徴として、妄想性障害は中高年世代以降の方に発症するケースが多く、また幻聴や思考の障害といった統合失調症のような症状はみられません。ただ高齢者のケースでは、抑うつ症状や幻覚なども見受けられ、イライラ、不機嫌な症状になることも多いです。なお、妄想の内容については主に5つの型に分類できるとされています。

被愛型 ある実在する人物が自分のことを好きであると妄想している
誇大型 自分は卓越した能力をもつ人間だと妄想している
嫉妬型 恋人や配偶者が不貞行為をしたという妄想している
被害型 誰かの陰謀や嫌がらせによって、自分は被害を受けたと妄想している
身体型 自分が悪臭を放っているなど、とても醜い状態であると妄想している
診断と治療について

診断は、医師の問診によってつけられます。その結果、治療が必要という場合は、統合失調症の患者さんと同様に薬物療法として抗精神病薬を用いますが、改善するのがなかなか困難なこともあります。また、治療中は患者さんの妄想を頭ごなしに否定するようなことはせず、一緒になって向き合っていくことも大切です。

当院院長が執筆しました 家族のためのはじめての認知症ガイド
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