高尿酸血症
hyperuricemia

高尿酸血症

「高尿酸血症」とは、老廃物である尿酸が体内に異常に増えすぎた状態のことで、血中尿酸値7.0mg/dL以上と定義されています。

生活習慣病のひとつであり、「風が吹いても痛い」という症状で知られる「痛風(つうふう)」の背景にある疾患です。食習慣の欧米化に伴い、わが国の高尿酸血症患者数は年々増加しており、特に30代以降の中高年男性に多くみられます。

高尿酸血症そのものは無症状なので、健康診断・人間ドックなど血液検査で初めて尿酸値が高いことに気づかれる方がほとんどです。

水面下では、関節に尿酸の結晶(尿酸塩結晶)が沈着していき、はがれ落ちるときに痛む急性関節炎(痛風)や、尿路結石・腎機能の低下、心血管障害などの合併症を引き起こしやすくなるため、「尿酸値を適切にコントロールすること」が大切です。

健康診断・人間ドックで尿酸値異常を指摘された、ご家族に痛風の方がいる、尿酸値・痛風に関して心配事がある、痛風発作で痛みがある、といった条件に該当する方は、当院までお気軽にご相談ください。

高尿酸血症・痛風になりやすい人

以下の項目に当てはまる数が多い程、高尿酸血症や痛風になりやすい傾向があるので注意が必要です。なお、突然の足の痛み(特に親指付け根)や腫れなど自覚症状がある場合には、すみやかにご来院ください。

  • お酒・ジュースなどの砂糖入り清涼飲料水をよく飲む
  • プリン体の多い食品をよく食べる
  • 水分をあまり摂らない
  • 運動不足
  • 激しい運動が好き
  • 30代以降の男性
  • 肥満・肥満気味
  • ストレスを抱えている
  • 負けず嫌い
  • 責任感がある
  • せっかち
  • 家族に痛風の方がいる

尿酸とプリン体

尿酸とは「プリン体が肝臓で分解された老廃物」のことで、尿・便に混じって排泄されます。

プリン体は「ビールに多く含まれる悪者」といったイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、実は肉・魚・穀物・野菜にも含まれている「うまみの元」です。

プリン体は美味しいものに多く含まれ、特にレバー類・煮干し・干ししいたけなどの一見ヘルシーそうに見える食品には、ビールと比べてはるかに多くのプリン体が含まれています。

なお、プリン体の約7~8割は体内でエネルギー源として常に産生され、食事からのプリン体摂取は2~3割程度に過ぎません。

高尿酸血症・痛風の症状

「高尿酸血症」と、その延長線上にある「痛風」では、現れる症状に違いがあります。

高尿酸血症の症状

体内の尿酸の量が増えて、高尿酸血症を発症しても、多くの場合「無症状」です。

痛風の症状

体内の尿酸の量が増え続けると、血中に溶け切らない過剰な尿酸が結晶化(尿酸塩結晶)して、関節に沈着するようになります。運動などを行うことにより、関節から尿酸塩の結晶がはがれ落ちると、関節炎が起こります(=痛風発作)。

痛風発作の特徴は、以下の通りです。

【症状】

  • 突然の強い痛み(歩けないことも)
  • 関節の赤み・腫れ
  • 関節の違和感・ムズムズする感じ(発作が起こる予兆) ※個人差があります

なお、痛みのピークは痛みの出現から半日~1日程度で、3日~2週間経つと自然に治ります。また、発作は早朝や春・夏に多いとされます。

【関節炎の起こる部位】

  • 足の親指の付け根 ※痛風発作のほとんどで起こります
  • 足首・足の甲・かかと
  • 手や耳(上半分) ※稀に起こることもあります

また、尿酸値の高い状態が続き、痛風発作が頻発するようになると、痛風発作よりは弱い痛みが継続するようになります(慢性痛風性関節炎)。

関節炎が慢性化すると、手足の指先、肘、膝、アキレス腱、耳などに尿酸塩の結晶が溜まって、コブのような「痛風結節」や関節の変形が起ることもあります。

高尿酸血症の原因

高尿酸血症は、遺伝的要因と環境的要因が関わり合って発症しています。

遺伝的要因

ご家族に尿酸値が高い、あるいは痛風の人がいる場合には、体質的に尿酸値が高くなりやすいです。

遺伝的要因として、以下の2つのタイプがあります。

※両者が混在している場合もあります。

  • 腎臓の排泄低下

尿酸は主に腎臓から排泄されますが、腎機能が低下すると尿酸の排泄もされにくくなるため、血液中の尿酸値は高くなります。日本人患者さんに多いタイプです。

なお、女性ホルモンには腎臓からの尿酸排出を促す作用があるので女性は尿酸値が高くなりにくく、高尿酸血症の患者は圧倒的に男性に多いです。

  • 尿酸の産生過剰

プリン体を多く含む食品を過剰摂取すると、体内での尿酸産生が増え、尿酸値は上がります。

環境的要因

高尿酸血症の主な原因は「生活習慣の乱れ」であり、環境的要因には以下のようなものがあります。

  • 肥満

肥満の方は、肉類や内臓・白子などプリン体を多く含む食品を好んで摂る傾向があるため、高尿酸血症になりやすいとされます。ほかに、内臓脂肪が蓄積すると尿酸産生が過剰になる、インスリン抵抗性によって尿酸の再吸収が促進されて尿酸の排泄が低下する、という説もあります。

(参考)肥満の定義:日本肥満学会ではBMI*3<25を普通体重と定め、BMI=22を適正体重として、統計上最も病気になりにくい体重としています。

   *3(参考)BMI:体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数。BMIは体重(kg)÷(身長m)2で求められる。また、適正体重は(身長m)2 ×22で求められます。

  • アルコールの過剰摂取

特にアルコールの過剰摂取が問題となります。尿酸値が高くなる要因として「ビール」が有名ですが、お酒の種類に関わらず、アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるので、要注意です。

  • プリン体の過剰摂取

肉・魚・ジュースなどの果糖飲料といった食品を過剰摂取することで、尿酸値が高くなります。レバーや干物にも、プリン体は多く含まれています。

  • 薬剤の影響

一部の利尿剤では尿の排泄を増やしますが、尿酸の排泄を妨げるため、尿酸値が上がりやすくなります。また、少量のアスピリン系鎮痛剤は尿酸値を上げるので、痛風発作が起こっているときに痛め止めとして服用することは避けましょう。

  • ストレス

ストレスの多い生活をしていると、交感神経が活発に働いて血管が収縮するため、全身の血の巡りが悪くなります。腎臓へ送られる血液も少なくなることから、尿酸が体外でうまく排泄されなくなるため、尿酸が体内に溜まり尿酸値が上昇していきます。

高尿酸血症の検査・診断

当院では、日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインに準拠した検査を行っています。問診・血液検査・尿検査を中心に、必要に応じて様々な検査を組み合わせ、高尿酸血症・痛風の診断をします。

なお、痛みの出ている痛風発作中や発作直後は、血液検査をしても正しい尿酸値が測れないことがあるため、症状が落ち着いた別日に改めて検査を行います。

高尿酸血症の検査

  • 問診

自覚症状の有無、喫煙・飲酒・運動・ストレスの有無といった生活習慣、既往症(特に高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病)、ご家族に高尿酸血症の方はいるかなど、詳しくお伺いします。

  • 血液検査

血液中の尿酸濃度(尿酸値)を調べます。

  • 尿検査

尿のpH値を調べます。体内の尿酸が増えると、尿は酸性になります。

また、腎機能をチェックすることで、高尿酸血症のタイプを調べ、治療の参考にします。なお、尿酸値の推移や合併症の早期発見のため、定期的に尿検査を行います。

高尿酸血症の診断

尿酸値が7mg/dL以上を「高尿酸血症」と診断します。

8~9mg/dL以上で、腎障害・高血圧・糖尿病・肥満など合併症がある場合には、すぐに治療の開始を検討します。

高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療では、生活習慣の見直しや薬物治療によって、尿酸値を下げ、適正にコントロールすることを目的としています。さらに溜まった尿酸の結晶を溶かして、痛風発作や腎臓病・心血管疾患・尿路結石など合併症の発症リスクを下げることを目標とします。

当院では、尿酸値の値、痛風発作・痛風結節や合併症の有無など、個々の患者さんに合わせて、無理なく続けられるよう治療を進めていきます。

不安や疑問点などありましたら、お気軽にご相談ください。

生活習慣の改善(食事療法・運動療法)

高尿酸血症は生活習慣病なので、治療の基本となるのが食事や運動による「生活習慣の改善」です。高尿酸血症患者さんでは肥満傾向にある方が多いため、特に「肥満解消」が効果的です。

食事療法

  • プリン体の多い食品の摂取制限

治療ガイドラインによると、「プリン体の摂取目安は1日400mg」と示されているため、内臓類・肉類・魚介類・干物などプリン体を多く含む食品・高カロリー食の摂取は控えましょう。また、清涼飲料水など甘い飲み物に含まれる果糖も尿酸値を上げる作用があります。

<プリン体を多く含む食品の一例>※100gあたり
レバー類(200~300mg)、白子(300mg)、エビ・イワシ・カツオ(200~270mg)、肉(100~200mg)など

  • アルコールの摂取制限

尿酸値を上げるアルコールは「ビール」だけではありません。「ビール以外なら量を気にせず飲んでも大丈夫かな」と思われるかもしれませんが、アルコール飲料の摂取自体、尿酸値を増加させる作用があります。

治療ガイドラインによると、アルコールが尿酸値に影響を与えない量の目安として、ビール500mL以下、日本酒1合以下、ウイスキー60mL以下、焼酎(25%)100ml以下とされています。

運動療法

肥満を解消するためには、食事・飲酒制限と共に週3回程度の軽い運動を行いましょう。会話できるぐらいの運動強度で、ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの有酸素運動からが始めるのがおすすめです。また、あまり時間がない方は、エレベーターよりも階段を使う、1駅分歩くといったように、できる範囲で普段より歩く距離を伸ばすと良いでしょう。

ただし、瞬発力が必要な短距離走やベンチプレスなどの激しい運動は、逆に尿酸値を上げることに繋がる上、痛風発作を引き起こす「きっかけ」となる場合があるので要注意です。

運動の際には水分補給を意識的に行い、脱水症状に十分な注意が必要です。

※持病がある方は医師に運動の可否、適切な運動量などを確認し、運動前後には、準備・整理運動を行いましょう。

運動量の目安は1日15分~30分程度、週3回、汗ばむ程度(例:早歩きのウォーキング・自転車など)とされています。普段運動していない方は、「できるだけ歩く」「階段を使う」「自転車で買い物に行く」「ラジオ体操」「バランス運動」など、日常生活の中で身体活動量を増やすことから始めると良いでしょう。

薬物治療

痛風発作を繰り返したり痛風結節ができたりしている場合には、尿酸値の数値に関わらず「薬物療法」の適応となります。

高尿酸血症治療薬は大きく分けて以下の2種類があります。

  • 腎臓での尿酸排泄を促す薬(尿酸排泄促進薬)
  • 尿酸の生成を抑える薬(尿酸生成抑制薬)

なお、高尿酸血症のお薬は自己判断で中止したり、減量したりすることは大変危険です。

お薬の副作用や服用方法など気になる点がある場合には、医師またはスタッフまでお気軽ご相談ください。

よくある質問

1. 高尿酸血症になると、必ず「痛風」になりますか?

尿酸値が高い程、痛風リスクは高まりますが、高尿酸血症=痛風ではありません。

また、高尿酸状態が引き起こす病気は「痛風」だけでなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの他の生活習慣病やメタボリックシンドローム、狭心症・心筋梗塞などの心疾患、痛風腎、尿路結石などといった合併症を引き起こす恐れがあります。

2. 高尿酸血症を予防するには、どうすれば良いでしょうか?

高尿酸血症の主な原因は、生活習慣であることが分かっているので、生活習慣の見直しが効果的です。

  • 3食栄養バランスの良い食事を摂る

肥満は尿酸値を上昇させます。カロリーオーバーや脂肪の摂り過ぎに気を付けましょう。

  • アルコールの種類に関わらず、アルコール摂取量を減らす

「焼酎なら大丈夫」ではなく、アルコール自体に尿酸を上げる働きがあるので、アルコール類すべてを控えることが大事です。

  • 水分・野菜を多く摂る

野菜・海藻類などには尿をアルカリ化する作用があるため、尿路結石を予防します。

  • 軽い有酸素運動を行う

毎日、食後に30分程度のウォーキングがおすすめです。

  • ストレス解消

痛風発作は強いストレスがあるときに起こりやすい傾向があります。

日頃からストレス発散して、溜めないような生活を送りましょう。

ただし、暴飲暴食・激しい運動は尿酸値上昇に繋がります。

3. 尿酸値を上げる食べ物には、どんなものがありますか?

尿酸値を上げるプリン体を多く含む食べ物を見分ける簡単な方法があります。

注目すべきポイントは「細胞の数」です。

例えば卵1つに含まれるプリン体の量は、ほとんどありません。

一方で、レバーや白子などの肉・魚の内臓、タラコなどの魚卵には、小さな細胞がたくさん詰まっているので、プリン体の量は非常に多く含まれます。

ですから、内臓や魚卵は食べ過ぎないようにしましょう。

院長からのひとこと

尿酸値は女性よりも男性の方が高く、成人男性の15~20%が高尿酸血症といわれています。日頃から、尿酸コントロールに努め痛風を予防していきましょう。

記事執筆者

相生山ほのぼのメモリークリニック 院長 松永 慎史
相生山ほのぼのメモリークリニック

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  • 略歴・経歴

    • 2007年藤田医科大学医学部 卒業
    • 2007年藤田医科大学病院 研修医
    • 2009年藤田医科大学医学部 精神神経科
    • 2011年医療法人静心会 桶狭間病院 藤田こころケアセンター 医長
    • 2014年藤田医科大学医学部 精神神経科講師
    • 2018年藤田医科大学医学部 認知症・高齢診療科(内科) 講師
    • 2020年相生山ほのぼのメモリークリニック開院
  • 所属学会

    • 日本認知症学会 専門医・指導医
    • 日本老年精神医学会 専門医・指導医
    • 日本精神神経学会 専門医・指導医
    • 日本精神神経学会 認知症診療医
    • 精神保健指定医
    • 難病指定医
    • レビー小体型認知症研究会 推奨医
    • 認知症サポート医

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