2024年11月13日に中央社会保険医療協議会で、アルツハイマー病の抗アミロイド抗体薬ドナネマブ(商品名:ケサンラ)の薬価が350mg20mL1瓶6万6948円と承認されました。1年間の薬価は約308万円となります。レカネマブ(レケンビ)が年間298万円でしたので、ほぼ同じ薬価になりました。ドナネマブの最適使用推進ガイドラインも発表され、治療できる施設基準なども、レカネマブと概ね変わりないようです。
現時点で私が思う、レカネマブと比較した、ドナネマブの利点ですが、
1)4週に1回の点滴静注(レカネマブは2週に1回の点滴静注)
2)原則18カ月の治療だが、12カ月時点でのアミロイドPETで、Aβプラークが除去されていれば、治療終了できる(レカネマブも原則18カ月の投与)
3)MMSE20点以上、28点以下の患者さんが対象(レカネマブはMMSE22点以上)
ドナネマブの方が、通院頻度が少なく、早期で治療終了できる可能性がある点、MMSE20点以上とレカネマブと比較してやや認知機能が低下した方も、治療対象となる点が利点と考えられます。
一方で、レカネマブと比較した際のドナネマブの懸念点は、
1)対象となった患者さんの条件が異なるため、直接比較はできないものの、臨床試験ではレカネマブが進行を27%抑制するのに対してドナネマブは約22%であったこと
2)上記と同じ理由で直接比較はできないが、副作用としてのMRIでみられるアミロイド関連画像異常(ARIA)は、レカネマブでARIA-H(MRIで確認される脳の微小出血)が17.3%、ARIA-E(MRIで確認される脳の浮腫)が12.6%に対し、ドナネマブでARIA-Hが31.4%、ARIA-Eが24.0%であったこと
3)医者からみると、4週間に1回の診察よりも、2週間に1回診察できる方が、患者さんの状態を細かく把握でき、安全に治療が行える
4)MMSE20点以上、28点以下の患者さんが対象(レカネマブはMMSE22点以上)のため、レカネマブのようにMMSE29-30点の患者さん(より軽症の方)は治療導入が出来ない
など、いくつかの懸念点があります。特に安全性の観点からは、私はレカネマブの方が良いのではないか思います。
また、たまに外来で、「先生がアルツハイマー病になったら、レカネマブやドナネマブの治療を受けますか?」と質問されることがあります。
これは、あくまで私自身の考えですが、どちらの抗体療法も概ね半年進行を遅らせる程度の効果と考えるなら、私なら早期アルツハイマー病と診断された時点で、現役で医師として働く能力があるのであれば、副作用のリスクはありますが、半年でも長く働ける方が貴重なため、治療を受ける可能性はあると思います。一方で、例えば75歳で医師を引退していて、早期アルツハイマー病と診断されたのであれば、その時点で自分自身に治療費を超えるほどの生産性がないでしょうし、通院に付き添う家族の負担や、通院・注射・検査などで拘束される時間なども考えると、治療は受けない可能性が高いと思います。ただ、家族の意見も考える必要があると思いますが・・・
と現時点では、お答えしています。この辺りの考え方は、人それぞれあると思いますので、あくまで参考まで。
せめて、「治療を受けると2年は現状維持できます」ぐらいの効果があればよいのですが・・・。これからのアルツハイマー病治療の発展に期待したいと思います。
また、当院では、ドナネマブに関しても、藤田医科大学病院 認知症・高齢診療科と連携し、治療導入できるよう進めたいと思います。また、当院も6カ月以降の投与ができるよう、フォローアップ施設への登録も進めたいと思います。引き続き、頼れる認知症の専門医療機関を目指し、精進してまいります。
少しずつ寒くなり、インフルエンザやコロナも増えてきましたが、皆さまもお体に気を付けて。