診療していると、お薬の管理について良く相談を受けます。
・家にもらった薬がたくさんあまっている
・朝は飲めるが、夕方は飲み忘れる
・間違えてたくさん飲んでしまう
・お薬をセットしても、結局飲んでくれていない
などなど、介護していると、お薬の管理ってとても難しいですよね・・・
患者さんが薬を飲み忘れることは、病状の安定や生活の質に直結する重要な課題です。特に、認知症の患者さんは記憶力の低下や判断力の低下などから、服薬管理が難しくなることが多々あります。薬をきちんと服用できないと、症状の進行を抑えたり合併症を予防したりする効果が得られなくなる恐れがあり、場合によっては症状の急激な悪化や入院リスクの上昇にもつながります。そのため、飲み忘れを防ぐための対策を講じることは、患者さんだけでなくご家族や介護者にとっても重要です。しかしながら、色々と対策しても、上手くいかないことが多いですよね。
認知症患者さんが薬を飲み忘れる要因として、
1)記憶障害や理解力の低下
障害や理解力の低下から、薬を飲むことを忘れる、薬の必要性を理解できない
2)意欲の低下
意欲の低下から、面倒だからといって、薬の存在を知っていても自発的に飲もうとしない
などが主な要因になります。
飲み忘れを防ぐポイントとしては、
1)薬の管理をできるだけシンプルにする
主治医と相談し、薬の種類や服薬回数を出来るだけ少なくしてもらうことや、一包化(1回分の薬を一つの袋にまとめる)してもらうと管理が楽になります。
2)薬のセットのポイント
内服する曜日や時間帯などを大きく書いておく、カレンダーやホワイトボードなど目につきやすい場所に内服予定を貼り出すといった工夫も有用です。お薬カレンダーや、お薬ケースを利用して、1~4週間分をセットできるようにするのも効果的です。また、最近は服薬支援をしてくれるロボットや機械も販売されており、薬を入れたボックスがインターネット経由でデータを送受信し、時間になると蓋が開き、飲み忘れが生じるとアラームや家族にメールが届くなどの機能を備えた製品も登場しています。
3)介護保険制度を利用する
薬をセットしても内服できない、支援ロボットを使っても内服してくれない、間違えてたくさん飲んでしまう場合もしばしばあります。そのような際は、介護保険制度を利用し、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、デイサービス・デイケアと連携し、服薬を支援してもらうのも効果的です。支援者が関わったときに内服を勧めてもらうことで、1週間に安全に内服できる回数を増やすことができます。
まとめますと、認知症患者さんの飲み忘れを防ぐためには、第一に主治医と協力し、「シンプルで分かりやすい服薬管理」を目指し、状態に応じて適切な服薬支援体制を整えることが大切です。また、大変とは思いますが、家族や支援者が声をかける際に、「なぜ薬が必要なのか」「今飲むとどんなメリットがあるのか」を分かりやすく伝え、納得してもらうアプローチを心がけることも大切です。
ブログでは、引き続き良く相談を受けることや、最新の認知症や健康に関する情報を発信していきます。今後ともよろしくお願いいたします。