本日、2023年12月13日に、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会で、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)の保険適用を了承し、薬価は年間298万円(体重50キロの場合)で、12月20日から適用されると報道されました。
わが国は少子高齢化が進み、医療費が国の財政を圧迫しているのが現状です。
医師としては、ここまで何度かブログにも書きましたが、レカネマブの効果は小さく、副作用のリスクが高いことを考えた場合に、その費用対効果も考えると、どのような患者さんが、この超高額な保険診療の適応となるのか、真剣に考えなければならないと思っています。
ネットで確認できた、厚生労働省のレカネマブの最適使用推進ガイドラインを読む限り、レカネマブを開始できる医療機関は限定的で、おそらく基幹型の認知症疾患医療センターや大学病院クラスの医療機関になりそうです。
投与対象となる患者さんは、
① 患者本人及び家族・介護者の、安全性に関する内容も踏まえ、本剤による治療意思が確認されていること
② 本剤の禁忌に該当しないこと
【禁忌】
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴がある患者
本剤投与開始前に血管原性脳浮腫、5 個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリ ン沈着症又は 1 cm を超える脳出血が認められる患者
③ MRI 検査(1.5 Tesla 以上)が実施可能であること
④ 認知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲が以下の(a)及び(b)の両方を満たすことが、投与開始前 1 か月以内の期間を目安に確認されていること
(a) 認知機能評価 MMSE スコア 22 点以上
(b) 臨床認知症尺度 CDR 全般スコア 0.5 又は1
⑤ ①~④を満たすことを確認した上で、アミロイド PET 又は脳脊髄液(CSF)検査を実 施し、Aβ 病理を示唆する所見が確認されていること
となっています。
しかしながら、臨床試験の結果を見れば、これだけで適応になるか判断する不十分なのは明らかで、安全性を考えると、アルツハイマー病のリスク遺伝子であるAPOE4をもつと、ARIAのリスクが大幅に増加することや、抗血小板薬や抗凝固薬など血液をサラサラにする薬を内服している方の脳浮腫や脳出血にも注意が必要であり、上記以外にも注意すべき点が複数あると思います(特に、APOE4に関しては、アメリカでも注意喚起されているのに、日本は注意喚起をしなくて大丈夫なの?と思っています)。
当院としましては、まずは最適使用推進ガイドラインだけでなく、ここまでの臨床試験の結果や知見も加味して、治療を受けるベネフィットがリスクよりも高い方に、本治療を提案できるような準備をこれから進めていきたいと思います。 また、私は藤田医科大学病院 認知症・高齢診療科でも認知症外来を行っていますので、そちらでも、どのように対応していくのか、話し合いたいと思います。