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2025.05.25

認知症と難聴の関係 〜耳のケアが脳を守る〜

こんにちは。相生山ほのぼのメモリークリニック院長の松永です。

今回は、「難聴と認知症」の関係について、最近の研究も交えながら分かりやすくご紹介します。
年齢とともに「耳が遠くなる」のは自然なことですが、実は脳の健康にも深く関わっていることが分かってきています。

難聴は「予防できる認知症のリスク」!

2017年に発表された国際的な研究では、「難聴」は認知症の最大の予防可能なリスク因子の一つとされています(1)。
つまり、聞こえのケアをすることで、将来の認知症のリスクを減らせる可能性があるということです。

アメリカの大規模調査でも、中等度の難聴がある人は認知症のリスクが約2倍、重度では約5倍になるという報告があります(2)。

高齢者の約半数が「聞こえにくさ」を抱えています

年を重ねると、聴力はどうしても低下しやすくなります。

たとえば、日本の厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者のおよそ2人に1人が聴力に問題を抱えているとされています(厚労省, 2020)。
海外の調査でも、

  • 65〜74歳の約3〜4割
  • 75歳以上では5〜6割以上
    の方が難聴の症状を持っているという結果があります(3)。

それでも、多くの方が「年のせいだから」と放置してしまいがちです。

難聴が認知症につながる理由とは?

「聞こえにくさ」がそのまま脳の衰えにつながるわけではありませんが、次のような要因が影響していると考えられています。

  • 脳への音の刺激が減ることで、脳の聴覚に関わる部分が弱くなる
  • 会話が減って孤立しやすくなる
  • 聞き取りに集中することで、他の脳の働きが疲れてしまう(=認知的負荷)

このように、複数の要素が重なって、認知症のリスクが高まっていくのです。

補聴器が脳の健康を守る可能性も!

2023年にアメリカで行われた「ACHIEVE試験」では、軽〜中等度の難聴がある高齢者に補聴器を使ってもらい、3年間にわたって脳の働きの変化を調べました(4)。

その結果、認知機能が下がるリスクをおよそ48%も抑えられたという、注目すべきデータが出ています。

つまり、補聴器をうまく活用することが、認知症予防にもつながる可能性があるのです。

「聞こえにくいかも?」と思ったら、早めの検査を

  • テレビの音が大きいと言われる
  • 会話で聞き返すことが増えた
  • 電話の声が聞き取りづらい

こうした症状に心当たりがあれば、早めに耳鼻咽喉科での聴力検査をおすすめします。

「年だから仕方ない」と我慢せず、補聴器などのサポートを上手に取り入れることが、脳の健康を守る第一歩になります。

引用文献

1)Livingston G, et al. (2017). Dementia prevention, intervention, and care. The Lancet, 390(10113), 2673–2734.

2)Lin FR, et al. (2011). Hearing loss and incident dementia. Archives of Neurology, 68(2), 214–220.

3)Wilson BS, Tucci DL, Merson MH, O’Donoghue GM. Global hearing health care: new findings and perspectives. Lancet. 2017;390(10111):2503–2515.

4)Lin FR, et al. (2023). Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE): a multicentre, randomised controlled trial. The Lancet, 402(10393), 1961–1970.

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