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2021.09.21

Q&A5. 話題になっている認知症の新薬について

ここ数ヶ月、TVや新聞の報道もあり、“アメリカで承認された、アルツハイマーが治る新薬は、日本ではいつ使用できますか?” というご質問を時々いただきます。

簡単に説明することが難しいのですが、このお薬の名前は、アデュカヌマブといいます。

2021年6月8日に、米国食品医薬品局(FDA)が、バイオジェンとエーザイが開発した、アルツハイマー病の新薬、アデュカヌマブを迅速承認しました。アデュカヌマブはアルツハイマー病の原因の一つと考えられている、アミロイドβを標的とする抗体で、脳内のアミロイドβを減少させることにより神経変性症状の進行を抑制すると考えられています。

実際に、アデュカヌマブは、アルツハイマー病の患者さんにおいて、

  1. 脳内のアミロイドβを減少させる
  2. 1年半でプラセボと比較し、認知機能の低下を約20%遅らせる(約80%は進行する)
  3. 副作用には主に、アミロイド関連画像異常(脳浮腫、微小出血など)が40%前後

ということが、臨床試験で報告されています。

この薬の問題点の一つは、上記の通り、臨床試験での効果がそれほど高くない点です(約20%しか進行を遅らせることが出来ない)。もともと、臨床試験は無益性解析の結果から有効性を示す事が難しいと判断され、2019年3月に第3相試験が途中で中止されており、その後に再解析した結果がFDAに申請されています。また、FDA諮問委員会(外部専門科の評価)では外部の専門家11名中、10名がこの再解析の結果に対して否定したと報告されています。今回のFDAの承認も、あくまで条件付き承認(再度、試験を行うことが条件)であり、このお薬を正確に評価することはまだまだ現状は難しいです。

日本でも申請中ですが、残念ながら、現状は使用できません。

また、毎月1回の注射であることや、薬剤費だけで、年間日本円で約600万円かかる点も問題の一つです(日本の保険制度では、普通に使用することは難しいのではと思います)。

アデュカヌマブにはネガティブな意見も多いのですが、アミロイドβを標的としたお薬が、多少でも効果がある可能性が示されたことは、アルツハイマー病の治療において大変価値があると、私はポジティブに考えています。また、これまでのアミロイドβを標的とした研究から、アミロイドβはアルツハイマー病の原因の一つではあるものの、他にも原因があるのではないかとも推測されます。近い将来、アデュカヌマブの追加試験から新たな知見が得られること、また、他の原因が新たに発見されることについても、今後、期待したいと思っています。

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